小津安二郎
ё小津だけにしかない小津スタイル
小津は、キネマ旬報ベストテンで第1位を取った回数が最も多い監督であり、世界的にも評価が高く、各国の映画作家たちからも敬愛されている。小津映画がどの様なものであったかは、ヴィム・ヴェンダースが記録映画(「東京画」)にしているので、そちらも併せて見てもらいたい。
小津映画のスタイルは非常に独特だ。それは一種の様式美に達した完璧なスタイルである。彼ほど自分のスタイルにわがままにこだわった監督はいまい。小津映画は雰囲気からして他の映画とは性質が異なり、何か落ち着いた空間美を感じさせる。ゆえに小津映画は見れば見るほど味わい深く、心に優しく残る。
東京物語 小津スタイルは大きく分けて三つある。
第一は、正面からの低いカメラ・ポジション。レンズは決まって標準の50ミリ。ドリーも使わず、パンも一切しなかった。
第二は、決してフェードイン・フェードアウト、オーバーラップをしないこと。小津はカットとカットを直接つないだ。画面に人物一人だけのカットもよく利用した。
第三は、役者の動きを何もかも自分で決めること。「部屋を一周してこの位置で止まって、手を見てからセリフを言ってくれ」という風に細かく動きを指導し、役者は何も考えずに、小津の言われるままに動くだけだった。しかしそれが映画になると、ちゃんとしたドラマとして形になるのである。小津の頭の中では映画がすでにできあがっていたのである。
こういったスタイルからもわかるように、小津はまさに監督主義であった。世界的に評価の高い「晩春」「東京物語」(写真)などは小津のその監督としての技量を知る集大成といえるシャシンであり、映画のバイブルである。(この記事は、http://cinema-magazine.com/new_kantoku/ozu.htmサイトより転載)
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