船戸与一という硬派なる心意気

Э船戸与一という硬派なる心意気

 船戸与一という作家をご存知ですか?
 豊浦志朗の名義で『叛アメリカ史』を書いた彼は、先住民族とそれを虐げてきた略奪者たちの構図、その上に成り立った現代史の上に皺ぶく闘争と不条理の歴史に、小説という弾薬をもって風穴をあけようと試みた。
 恩讐と欲望の果てに沸き起こる血と硝煙の宴を、彼のペンは日本冒険小説というジャンルで明らかにしていく。他の誰もが決してやろうとはしない世界の果てを自ら旅し、取材し、調査し、彼なりの咀嚼を施した小説は、迫力を以って迫ってくる。
 それは船戸与一という一人の男が辿った文章という方法論での闘争の記録である。それは小説の形で昇華された彼の叙事詩ともいうべきもの。現代史の語り部としての、船戸の存在は、日本活字文化において、まさに唯一無二の硬派である。
 かつての物書きの心意気を、現代に繋いでいるその作品は多くのものを惹きつけてやまない。とにかく一読あれ!


 Ф船戸 与一(ふなど よいち、本名:原田建司、1944年2月8日 - )
  冒険小説家。山口県下関市に生まれる。山口県立下関西高等学校早稲田大学法学部卒業。小学館祥伝社などの出版社勤務を経てフリーになり、執筆活動を始める。1979年『非合法員』(講談社)で冒険小説家としてデビュー。他に豊浦志朗の筆名で『叛アメリカ史』等のルポタージュ、外浦吾朗の筆名で『ゴルゴ13』、『メロス』の劇画原作も著わす。
 
 Ф受賞作品
1985年 - 『山猫の夏』第3回日本冒険小説協会大賞、第6回吉川英治文学新人賞
  〇ブラジル東北部の町エクルウは、アンドラーデ家とビーステルフェルト家に支配されている。両家はことごとに対立反目し、殺し合いが絶えない。そんな怨念の町に「山猫」こと弓削一徳がふらりと現れた。山猫の動く所、たちまち血しぶきがあがる。謎の山猫の恐るべき正体はいつ明かされる。南米三部作第一弾。

山猫の夏 【新装版】 (講談社文庫)

山猫の夏 【新装版】 (講談社文庫)

1988年 - 『猛き箱舟』で第6回日本冒険小説協会大賞
  〇あの「灰色熊」のような男になりたい。香坂正次は胸に野心を秘め、海外進出日本企業の非合法活動を担うその男に近づいて行った。彼に認められた正次の前には、血と暴力の支配するアフリカの大地が開けた。その仕事は、砂漠の小さな鉱山を、敵の攻撃から守ることだった―人の世の地獄、野望と絶望を謳いあげた大ロマン。

猛き箱舟 上 (集英社文庫)

猛き箱舟 上 (集英社文庫)

猛き箱舟 下 (集英社文庫)

猛き箱舟 下 (集英社文庫)

1989年 - 『伝説なき地』で第7回日本冒険小説協会大賞、第42回日本推理作家協会賞
  〇ベネズエラの名門エリゾンド家が所有する涸れた油田地帯から希土類と呼ばれる超伝導物質が発見された。独占的採掘権を餌に巨億の富を手に入れようと画策する当主ベルトロメオ。欲望に操られて憎しみ合う親兄弟と情婦ベロニカの血で血を洗う闘争が始まる。

1992年 - 『砂のクロニクル』で第10回日本冒険小説協会大賞、第5回山本周五郎賞。   〇それは、現代史大逆転の、最後の賭け。二万挺の自動小銃に託された、壮大なるロマン。ロンドンからモスクワへ、そして戒厳令下のイランへ。日本人武器商人〈ハジ〉は、ひた走る。歴史の隠された真実を明かしながら。煮えたぎる情念をまき散らしながら。物語作家としての天才と、メッセージのすべてを叩き込んだ未曽有の巨編。

砂のクロニクル

砂のクロニクル

1996年 - 『蝦夷地別件』で第14回日本冒険小説協会大賞
  〇時は18世紀末、老中・松平定信のころ。蝦夷地では、和人の横暴に対する先住民の憤怒の炎が燃えあがろうとしていた。この地の直轄を狙い謀略をめぐらす幕府と、松前藩の争い。ロシアを通じ、蝦夷に鉄砲の調達を約束するポーランド貴族―。歴史の転換点で様々な思惑が渦巻いた蝦夷地最大の蜂起「国後・目梨の乱」を未曾有のスケールで描く、超弩級大作。

蝦夷地別件〈上〉 (新潮文庫)

蝦夷地別件〈上〉 (新潮文庫)

蝦夷地別件〈中〉 (新潮文庫)

蝦夷地別件〈中〉 (新潮文庫)

蝦夷地別件〈下〉 (新潮文庫)

蝦夷地別件〈下〉 (新潮文庫)

2000年 - 『虹の谷の五月』で第123回直木賞
  〇旧ソ連崩壊後の第三世界。混迷の度合いを深める東南アジア。あらゆる価値観の見直しを求められる21世紀の冒険小説の指標を、少年の成長物語に託して巨匠がおくる冒険小説巨編、

虹の谷の五月

虹の谷の五月

2004年 - 『夢は荒れ地を』で第22回日本冒険小説協会大賞
  〇自衛官の楢本は、8年間行方不明の元同僚・越路を捜しにカンボジアに来た。楢本が越路を捜す目的は、越路の妻と自分が一緒になる承諾を得る為だ。越路を捜す間、楢本は人身売買、汚職、売春にまみれたカンボジアの現実に直面する。やがて楢本は、越路が幼児売買に関わっているとの噂を聞きつけるが…。著者待望のハードロマン。

夢は荒れ地を (文春文庫)

夢は荒れ地を (文春文庫)

(本の内容説明は、Bookデータベースより転載)



船戸与一より船戸与一に